銅合金のRRR測定 (1)
2012年1月18,25日 東谷、鈴木

(目的)
低温マス用の材質を選定するにあたって、低温(~20K)で熱伝導率が
できるだけよく、一方でできるだけ残留抵抗値(RRR)が小さいものを
探している。候補である高機能銅合金をいくつか集め、RRRを実験的に
求める。

(内容)
低温で熱伝導率がよいことはすなわち電気抵抗が少ないことを意味する。
電気抵抗が低温で小さくなると RRR=R(300K)/R(4K) は大きくなる。
例えばCLIOで用いた無酸素銅(OFC)ではRRR~3000程度である(純度に依る)。
常温と低温で抵抗値が大きく異なると、渦電流(Eddy Current)が生じ
ミラーの位置制御に影響する。このため、低温で熱伝導は良いがRRRができるだけ
小さい(RRR~数10程度を想定)材質、さらに密度がサファイア(3.98g/cm3)に
近いもの、ということで銅合金関連が最有力である。

無酸素銅にわずかに不純物を混ぜるとRRRは数10になるという文献
例)  Zirconium copper - a new material for use at low temperatures?  (A. L. Woodcraft)
があったので、同様の素材を集めた。最終的には20kg程度のカウンターマス的に
使用するため、200x200x300mm程度のサイズが入手できる金属メーカを探し
そこからサンプル材を入手することにした。

  → 集めた材料


(作業メモ)
1) 本日測定するのは、CuAg(Cu-0.03%Ag)とCuSn(Cu-0.03%Sn)。
  硬材。直径1mmのワイア。
  

2) 区別のためにCuAgは長さ150mm、CuSnは160mmに、それぞれ6本ずつ切り出し、
  超音波洗浄機で10分ほど洗浄。
  

3) CuAgとCuSnの各3本はアニールのために釜に入れる。
  1時間で常温から400K、400Kを1時間維持、そのあと1時間で常温に戻してから
  (実際には戻らない)ヒータをオフ、とプログラム。
  実際には冷やす機構はないうえに真空なのでもっとゆっくり冷える。明日、鈴木さんが回収する。
   

4) 残った各3本はそのまま(硬材のまま)測定する。
   基盤にセットする。電流導線を試料の両端にとりつけ、電圧は中間から取り出す、
   いわゆる四端子法を用いる。
   

5) 導通チェック、常温の抵抗測定。
   Keithly DC and AC Current Source 6221 と Nanovoltimeter 2182A との
   組み合わせによるデルタモードで測定。電流は±100mA。
  

6) ヘリウムタンクにじゃぶ浸け。4Kの抵抗測定。
   

7) 引き上げて霜がついた状態。乾くのを待つ、もしくはドライヤーで乾かす。
  

8) CuSnも同様に測定を行う。長さ160mmなので少し長い。
  

(測定結果)

OFC-Ag
(時効処理前)
OFC-Ag
(時効処理後)
OFC-Sn
(時効処理前)
OFC-Sn
(時効処理後)
OFC-Zr
(時効処理前)
OFC-Zr
(時効処理後)
OFC-Zr
(文献1)
OFC
(文献2,3)
RRR 30.3 191.6 9.75 12.3 未測定 未測定 13.8 200~300
30.2 191.9 9.76 12.3 未測定 未測定
30.0 189.5 9.73 12.2 未測定 未測定
(文献1) http://reference.lowtemp.org/woodcraft_zrcu.pdf (文献2) http://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj/46/7/421/_pdf/-char/ja/ (文献3) 日立無酸素銅