GSMT 5.5章 風荷重の特徴 (Characterization of Wind Loading)
(文責:安藤裕康)
2003.04.14
(概要)
風の影響として、1)架台、主鏡面、副鏡面への風荷重、2)風によるシーイングへの
影響に分けて考えられる。
1)従来は望遠鏡をドームで覆ったり、すばるのようにウインドスクリーンの設置で
風荷重の影響を許容値以下にコントロールできた。30m以上の口径望遠鏡では
このような考えを適応できない。大きな構造は本質的に固有振動数が小さく風の
影響は相対的に大きくなる。 波長の違いはあるが30m口径の電波望遠鏡の設
計思想が参考になろう。
2)MMTの経験から風のフラッシング効果が評価されている。局所的な熱対流を
抑制したり望遠鏡構造の温度を周囲の温度に近づける役割をはたすからである。
(過去の研究のまとめ)
・風のフラッシング効果(水流、風洞実験) 8mドーム、4mドームで採用。
・接地境界層の影響回避 (すばるの水流実験で確認) GSMTグループは
我々の論文を引用せず言及がない。
(すばるの経験):ドーム形状を柱形状にしたことで接地境界層の乱流の影響を回避。
マウナケア山頂で最上のシーイングを実現している。(接地境界層の重要性)
シーイング劣化の大元は熱源と考え制御装置、制御計算機はドーム外へ。すばる
ではベントシャッターなどの開閉を行ってもシーイングへの影響かほとんどない
ことを確認しており、機械部分の熱源の除去が効いている。 風が構造体にぶつ
かってできる機械的な乱流のシーイングへの影響は小さいことを確認。これは
事前の計算でも確認済み。
・ 風のガストのスペクトルはダベンポート(Davenport)の式で記述されると
されてきたが、最近の測定では高周波数側に過剰エネルギーがあることがわかってきた。
今後はこれを考慮して望遠鏡架台の制御システムを設計する必要がある。
・ ドーム内の気流の流れを知ることが重要で計算機流体モデル(CFD)の活用がお勧め。
・ 風の影響の中でとりわけ主鏡(M1)への影響は決定的である。GEMINI South
で立ち上げ時主鏡面に24点の圧力センサーをとりつけ、さまざまな風方向、
望遠鏡高度に対してデータ取得。影響を解析中。 ドーム内の風の息は
ドーム外でのものより大きくなる傾向がみられた。
(詳しい解析の中間報告など、引用論文参考のこと)
(将来へのステップ)
・ GEMINIでの実験をCFDを用いて30m口径にスケールアップする。
・ ドーム内の風の息が大きくなる原因を追及する。(何が主要因か)
・ 既存のドーム、望遠鏡でのデータ取得を続ける。
追加参考文献:
Ando,H. et al., PASP, 103, 597-605, 1991,
" Some Airflow Properties of Telescope Enclosures estimated from water-tunnel tests"