とうこくレポート 2003年4月21日
" Enclosure and infrastructure requireement for OWL : possible solutions"
M. Quattri and F. Koch, SPIE Vol.4004(2000)
1、ドームに必要な機能
・経済的には、なるべく体積が小さく機能的な表面がよい。
・日中の太陽光線や極端な気象(風、雨、雪)から望遠鏡を守る。
・観測中、望遠鏡がどんな角度にあっても風から望遠鏡を守る。
・望遠鏡構造や光学素子の熱平衡のために内部温度を保つ。
・ドームシーイングを最小限に抑える。
30mクラスなら可能な、回転式の構造物建設やドーム内空調やメンテナンスなどが現実的に
行えるかどうかの検討が重要。
2、100メートル望遠鏡のドーム
・10mクラスの経験にならって100m望遠鏡を考える際、予算の問題が重要。
・ウィンドバッファーによって主鏡と望遠鏡を守るというやり方が可能か。
・膨大な空間の空調は、設置も電力供給も極端に大きくなる。
・観測スリットとドームのアスペクト比が高くなると、構造的に問題がでる。
巨大なドーム内の流体動力学の詳細な解析が必要。渦のスケールも屋外と変わりなくなる。
オープンエア式ドームは、ドームの半分づつが両側へ移動するが、経験的に障害物のサイズ
の3倍の距離をとれば風の影響が弱くなることを考慮すると、ドームは望遠鏡から300m
遠ざける必要があり、全部で1×0.4 km2の平坦な土地が必要になる。ドームの
合わせ面を風がうまく通るような設計にすれば、ドームの壁が風速50m/sを受けたとしても、
レールにかかる水平・垂直方向の力はどちらも実現可能な大きさになり、風を受けている
ドームを開閉するモータパワー等も問題ではなくなる。
局所的なウィンドスクリーンは、主鏡に直接吹きつける風から鏡面を守るだけでよくなる。
3、既成の大型ドーム
ドイツ・ベルリン付近にあるSIATは、長さ360m×幅220m×高さ107mで、
OWLが必要なドームの2倍以上大きい。ドームは開閉式で、可動部分は筋交いを用いて
強度をつけている。コストは600EUR/m2。
もう一つは、ウクライナ・チェルノブイリにある、原発事故で損傷した原子炉を覆う建物。
高度の放射能のため直接その建物で働くことは不可能だが、半径81m×長さ30mの建物
がスライドするようになっている。コストは200M EURO。
スライディングカバー式でいうと、日本・宮崎にあるシーガイアもある。2つの屋根がそれぞれ
両側に開くようになっていて、長さ300m×幅160mの領域をカバーしている。
4、望遠鏡の土台
土台(ピア)と地盤は、望遠鏡に対して堅い単体として振る舞う。様々な力が土台にかかった
とき、負荷を地盤に均等に渡し、局所的な破壊を起こさないようにしなければいけない。
これらをもとに、土台のコンクリートへの応力レベルや変形を見積もる解析を行った結果、
安全を見込んでも特に望遠鏡性能に影響するような土台建設上の問題はないことがわかった。