3Mメカニカルファスナー 簡易冷却実験
Mar 2, 2003 Tokoku
3Mメカニカルファスナー
MOIRCSの多層膜断熱(MLI)のうち、光学素子へのアクセス部分など、何度か開閉が
必要な箇所があるが、アルミフィルムは非常に脆いため、直接テープを貼って繰り返し
使うことは無理である。そういう時には、いわゆるマジックテープを使う方法がある。
そこで見つけたのが、3Mメカニカルファスナーで、両面を合わせたときの厚さが
わずか0.9mmという薄さと、さらに裏側にシール(粘着材)がついている点が便利だと
思ったので3Mに問い合わせると、真空・低温での使用データはないということだった。
サンプルを送って貰ったので、まずは液体窒素で簡易冷却実験を行った。
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厚さ |
材質 |
ループ |
0.5 mm |
- ポリエステル系ファブリックにPETフィルムをラミネート
- アクリル系粘着材
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フック |
1600ピン/25mm×25mm |
0.4 mm |
- ポリプロピレン主成分プラスティック
- アクリル系粘着材
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900ピン/25mm×25mm |
0.7 mm |
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※詳しくはこちら→3Mメカニカルファスナー
冷却実験
この簡易冷却実験では、以下の2点を確認する。
1、液体窒素に浸けたときマジックテープが剥がれないか
2、裏のシール面がMLIのアルミフィルムから剥がれないか
▼ 重さ約100gのアルミブロックを2つ用意し、それぞれ片面に多層膜断熱(MLI)用の
アルミフィルムを両面テープで貼り、その上にそれぞれ25mm×25mmに切ったメカニカル
ファスナーのループとフックを貼る。
▼ ループのブロックを糸で垂らし、その下にフックのブロックを合わせる。写真のようになる。
(アルミブロックを2段づつ重ねているので、写真では真ん中の1mmくらいのすきまがマジック
テープの隙間である。)
▼ これを液体窒素にどっぶりと浸けて、1時間置く。
▼1時間後。
(右の写真が傾いて見えるのは重心のせいであって、マジックテープが剥がれているのではない。)
▼ マジック部分が剥がれる様子はなかった。しばらく放置して霜が乾いた頃に手で剥がしたときの
力の感触は、常温で剥がすときと同じだった。フックがボロボロになるなどの異常はなかった。
結果
・2種類のフックについて、それぞれ1時間の簡単な実験を行ったが、マジック部分が特に劣化
したり、剥がれたりすることはなく、また裏面のシールも剥がれる様子はなかったので、今の
ところ、MLIの必要箇所に使うことは問題ないと思われる。
・データシートより、フックは1600ピン(ピンが密)のほうが密着度(係合力)やせん断係合力、
繰り返し係合力が強いようなので、1600ピンの方を使う予定である。
・今回の実験で使ったアルミブロックは、実際のMLIでひっぱられる重さに近いと思うが、長時間
低温でいろんな方向に引っ張られたときにどうなるかは、実際にやってみないとわからない。
・アウトガスが問題になるかどうかは現時点ではわからない。