本体デュワーの真空強度解析たたき台版
17 Sep, 2001 tokoku
□ たたき台
MOIRCS本体デュワーについて、おおまかなサイズと形状を決めて、大気圧に
対する強度解析も同時に行いながら、デュワーの板厚、リブの形状・大きさ、
デュワーの固定方法などを決めていきます。
これと同時に、本体デュワーの中にある光学ベンチのサイズ、強度、吊り方、
なども決めていくのですが、とりあえずひとつひとつ課題をクリアしていかねば。
まずたたき台として、おおまかに決めた光学まわり(ミラー、ベンチ、ターレット
も含む)が入る大きさのデュワーを考え、これに板厚20mmをつけ、中央部には
幅20mm、深さ50mmの巨大なリブをつけた構造を考えました。
さらに上部にはトップフランジをつけ(これもMOIRCS用のをつくる必要があり
ます)、そこから適当に4本の腕でデュワーを支える形を考えました。
解析条件
[材質]
・本体デュワー:Al6061
・トップフランジと腕:SUS304
[拘束条件]
・トップフランジは完全(3方向)に固定。
・デュワーに回転が生じないよう仮想的な拘束もいくつか。
[荷重条件]
・重力は考えない。
・外側に大気圧(1気圧)をかける。
これらの結果は以下のようになりました。
図1 変位分布図
変位量が最も大きいのは中央部で、313umへこんでいます。
(赤が変位量が大きく、青は小さい部分。)
図2 ミーゼス応力分布図
中央のリブの上(赤いところ)にやや応力集中がみられます。
最も大きな応力は24.3MPaです。これは、アルミAl6061の耐力(約54MPa※)
に対してちょっと大きい力という感じがします。つまり、リブの形状に
ついては、応力を分散させるような工夫をする必要がまだありそうだ
ということです。それにへこむ(変位)量ももう少し小さくしたいです。
※ただし同じAl6061でも、質別によって耐力が異なります。
例えば、Al6061-T4/T451では147MPa、Al6061-T6/T651では275MPaとなります。
□ 問題
実は、解析していて気づいた問題があります。
それは、このデュワー固定方法だと腕が回転するかもしれないということです。
図3 変位を上からみた様子
青い線が元の状態。赤い鎖線が変位した状態を大げさに表したもの。
何度か解析条件を変えてみても、また、デュワー自身が回転しないような
緩い拘束をしても、腕は図のように非対称にゆがみます。
実際には、トッププレートからさらに焦点面デュワーの下を支える腕と、
下からもターレット部分のデュワーを支える構造がつくので、そのときに
どう動くかはまだわかりませんが、腕の方向などもきちんと考えたほうが
よさそうです。
□ 結果
実際には、これに重力がかかり、中にも構造物ができるので、
まだ詳しい結果はわかりません。
このたたき台の結果を利用して、また内部構造の検討をして、
リブなどを考えるので、この結果はこれとして終了です。
次は、アイソグリッドみたいなリブを入れてみたい気もします。
(宇宙ロケットの燃料タンクの壁に使われるような強度補強構造。)