冷却実験・真空冷却関連レポート
2004年4月17-28日 (レポート:東谷)
実験
全体冷却実験を行った。
・レンズ&ミラーは全て搭載。バッフルも全て装着(今回初めて)。
・検出器はエンジニアチップ@CH1、サイエンスチップ@CH2(エンジニアチップは借り物)。
・ターレットは両チャンネルとも、古いベアリング、モータなし、Jバンドフィルタ固定@3段目。
・コールドヘッド固定@2段目。
・焦点移動機構装備
・シャッター装備
・ピンホール・テストパターンマスク固定@焦点面
・住重冷凍機の電源はラボのコンセントから供給、ヘリウムホースはコンプレッサに直結。
・冷凍機以外の電源は全て自動コネクタから供給。
・全体昇温用の巨大ヒータ(25Ω/200W)を2個使用(今回初めて)。
・merope搭載。electraは搭載せず。
・各部温度はLabVIEWでモニタ(今回から)。
・ネットワークは一部は自動コネクタのファイバー使用。一部イーサネット使用。
予冷はCIAXの上で行い、冷凍機だけのモードになってからシミュレータに載せ、
ハードウエアテスト(臼田テスト)とソフトウエアテスト(小杉テスト)を受けた。
装置の全重量は、2004年4月16日現在で 2033 kg だった。この時搭載されていなかったのは、
・パソコン merope
・焦点移動機構の制御系一式
・MOSのカルッセルやマスク
・冷凍機のヘリウムホース(4本)
・ターレットのモータ(6個)
・ウィンドウ
・フランジ大1枚
・フィルタ・グリズム等(4個だけ搭載)
これらも載せると2100kg程度になると思われる。これは、とりあえず許容範囲内とのこと。
結果・考察
時間メモ
経過時間 |
メモ |
0:00 |
予冷開始。デュワー真空度は9.5×10-3Torr(真空引き17時間)。 |
2:40 |
冷凍機オン。 |
7:10 |
午後6時。夜間用液体窒素交換。
※山頂での予冷の練習として、夜間は流量調整しない。 |
34:00 |
夜間用液体窒素交換。
|
76:00 |
低温での赤外結像実験。 |
78:00 |
予冷終了。 |
100:00 |
シミュレータに搭載。冷凍機ヘリウムは自動コネクタ使用せずに、
コンプレッサから直接。 |
103:00 |
シミュレータをいろいろ振って、撮像テスト。 |
- |
温度はゆっくり上昇。 |
151:00 |
シャッターテスト。 |
162:00 |
冷凍機オフ、ヒータオン。 |
239:00 |
乾燥窒素注入 |
243:00 |
実験終了 |
|
今回とこれまでの各部の温度記録
|
今回最低到達温度 [K] |
2003年8月の 最低到達温度 [K] |
2003年8月の 平衡温度 [K] |
2003年12月の 最低到達温度 [K] |
マウント(コリメータ) |
- |
80.6 |
83.6 |
81.2@Col3 |
マウント(カメラ) |
- |
72.9 |
75.1 |
78.8@Cam56 |
マウント(ミラー) |
104.5 |
88.9 |
91.4? |
91.0 |
光学ベンチ(コリメータ部) |
85.0 |
79.7 |
82.5 |
81.0 |
バルクヘッド端部 |
80.9 |
77.7 |
81.0 |
79.5 |
ターレット |
82.9@箱 |
79.2 |
80.8 |
80.9 |
熱パス(ベンチ側) |
72.7 |
69.1 |
71.3 |
116.1 |
熱パス(冷凍機側) |
61.2 |
47.3 |
48.0 |
54.4 |
|
1、全体的に最低到達温度が80Kよりも高かった。
・冷凍機第一段(にとりつけた銅板)の温度は通常より10K以上高かった。
・ミラーマウントの温度もこれまでより10K以上高かった。
(大きなウィンドウを使うようになったのは2003年12月実験から)
・検出器はエンジニアチップが77K、サイエンスチップは90Kまでしか
下がらなかった。
→対策重要。
2、予冷終了後は各部の温度はゆるやかに上昇を続けた。1時間で+0.3K程度。
→対策
内部の熱構造によっぽど大きなミスがない限り、現状で熱収支
バランスがとれていることになる。その場合は、
・輻射流入を減らす(MLI改良、限度はある)
・冷却パワーを増やす(冷凍機を2個にする、コンプレッサの分流、
電源確保などが問題)
などの対策が必要。
3、デュワー内壁に取りつけたプリアンプボックスの表面の温度は検出器の
電源を入れると大きく上昇した。デュワー内部がおよそ100K以下のとき、
約20K上昇した(電源を入れる前は約279K、電源を入れた後は約298K)。
・ケーブルを短くしたことでチップへの熱流入が増えたが、ケーブル
はこのままでいきたい。プリアンプボックスの蓋を外して熱気が
こもらないようにする、などの対策が必要。
・32チャンネル化したときにどうするか?
メモ
1、液体窒素タンクの重量を測った。1タンク150L入で、液体窒素だけの重さは約120kg
( 液体窒素の密度は0.808kg/L)になるはず。
普通のサイズの空のタンクは約110kgだった。満タンのとき、タンク全体の重さは
228kg、226kg、223kg、220kgだった(液体窒素配達から3日目くらいに測定)ので
だいたい良し。大きいタンクは満タンのとき、259kg。空のときは未測定。
2、山頂での予冷の練習として、夕方(18時頃)に液体窒素タンクを交換した後は翌朝
(9時頃)まで流量を調整しなかった。少なめに流して安定すれば、温度は順調に
下がり続け、液体窒素も翌朝まで十分もって、特に問題はなかった。
この結果、これまでよりも予冷時の温度の変動が小さくなったのはよかった。
(これまではタンク交換前後で±10K/hourなど大きく変動していた)。
また、液体窒素タンクはいつも通り900L+150L予備(タンク7本)を用意したが、
600L(タンク4本)で足りた。
※山頂での液体窒素配達は毎週水曜日の1回のみであること、輸送途中は車の
揺れでかなり消耗すること、などから十分多めの量を早めに予約するように
言われた。また、山頂で使う液体窒素は、会計の岡田さん管理の「消耗品」
として購入するよう言われた。
3、次回から、リモートでモニタできる液体窒素流量計を取りつける。
4、全体昇温用のヒータは、Lakeshoreのヒータ電力を使用した。定格200Wのヒータを
100W(2A)で使用した(ヒータ2個を各1台のLakeshoreに接続)。計4Aを使ったら、
Lakeshoreで使っていた配電盤でオーバーロード・エラーになった。要対策。
3Aでもオーバーロード、2AならOK、だったので、一つのヒータは装置以外の
ところから定電圧電源を持ってきたほうがよい。
5、4A分のヒータを使ったことに関しては、効果があった。乾燥窒素を入れなくても
まる3日で全体がほぼ常温に戻った。当面このままでやっていく。
※これまでは、2003年8月のときは早い段階から乾燥窒素を入れて4日。2003年12月
のときは(ヒータの電流配分に失敗してたので)液体窒素を入れても約7日。
チップボックスとベンチは、熱伝導的には独立になっている。昇温の際、チップ
にはヒータを入れなくてもだいたい同じ速度で温度は上がったが、最後の270Kから
はけっこう時間がかかりそう。昇温からデュワーを開けるまで時間の余裕がない
時は注意が必要(結露温度かどうかなど)。
6、デュワー内の液体窒素予冷管は、今回初めてフレキシブルなホースを使った
(ホース肉厚が薄く、ステンレスのひもを編み込んだ補強用ブレードもなしで、
低温仕様ではないもの)。実験後に真空引きしてみたが、実験前と同じように
真空がひけたので、特に目立つ破裂等はなかったと思う。繰り返しの使用に耐え
るかどうかは不明。取りつけが圧倒的に楽なので、当面このままでやっていく。
7、実験後にデュワーを開けた際の検出器熱パス関連のチェック。
銅網線じたいは、第二段ヘッドにしっかり固定されていた。
銅網線はMLIの外には出ていなかった。ラジエーションシールドにも触っていな
かった。銅網線を覆うブレードをラジエーションシールドに押しつけるように
カプトンテープで固定した。→浮かした固定のほうがベターかも。
銅網線の先が、MLIの上からラジエーションシールドに押し当てられていた。MLI
から第二段への熱流入と、MLIの短絡の二つの問題が起こりうる。
冷凍機第二段ヘッドがラジエーションシールドを軽く押している(これは以前
からわかっていた)。次回は冷凍機にゲタをはかせて、ラジエーションシールド
から離すようにする。
銅網線のヘッド取りつけ部の被膜が十分に剥がれてはいないようだった。
8、予冷用のフランジの真下に検出器電源等があるので、霜対策をする。
厚めのビニールシートをワンタッチでとめて、裾をテープでとめるように
する予定。ビニールシートが触っていなくても冷気で冷えるので予冷中は注意。
9、山頂で予冷が終わったあと、予冷管の真空引きをやる方法はあるか?
(真空ポンプがあれば済む。)
10、今回の全体実験の前に、MOS部のみの真空冷却実験で真空度が悪かったので
ヘリウムリークテストを行った。その結果、MOS部の真空度には問題はなく、
真空ポンプ引き口にある電磁バルブへのエア圧力が不十分でバルブが閉まって
しまい真空が引けないだけだった。十分なエアを供給していれば9×10-5Torr
まで引けた。
エアで動くものは、各々必要なエア圧力が異なるので、現在では最も強い
圧力(約60psi)でエアを供給している。
11、シミュレータに取りつける際などに電源をいったん切る時や、meropeを
リブートする際、温度などのログがとれなくなる。そのあとすぐに各種
のログ取得が正しく再開されているか確認するようにみんなで気をつける。