デュワー全体の真空テスト
Tokoku
Nov. 7, 2002 HST update
実験
MOIRCSデュワー全体の真空実験を行った。
これまで行った真空実験では、時間の都合であまりよく真空を引けないまま(せいぜい
10-3Torrレベル)冷却実験を行っていたが、今回はじっくりと真空実験を行い、
真空容器として問題がないことを確認する。
今回、デュワーの中には何一つ入っていない。
この実験に先立ち、オクタゴン下板に住重冷凍機とりつけ用の穴をあけたが、今回
はそこにめくら蓋をつけて実験を行った↓。
今回の実験の様子↓。スロート部から真空を引き、検出器デュワー底面で真空度を測定。
ゲートバルブを開いたままにするため、そこだけ圧縮空気を配管した↓(右)。
結果
1、本体デュワーは問題なく真空が引けた(24時間で2.5×10-4Torr、その後
リークテストをはさんだが、72時間で1.8×10-4Torr@検出器デュワーの底。
真空引き口付近では、72時間で5.2×10-5Torrまで達成)。
2、非常にノイズレベルの小さい状態でリークテストを行った結果、特にリーク箇所
は見当たらなかったので、デュワーには問題ないと思われる。真空を引ききれな
いのはアウトガスのせいだと思われる。
参考)COMICSは、全部モノが入った状態で常温で60時間で5×10-5Torr程度までいく。
COMICSデュワーがステンレスなのに対し、MOIRCSではデュワー内壁が
アルミで、一部アノダイズまでしてしまった箇所があるので、内壁表面
はきれいではない。
---------- 実験の経緯 -------------
11月1日(金) デュワー組み上げ。真空ひきはじめ。引けない...。
2時間ほど引いても「1 Torr」くらいにしか引けない。
ほとんど「じゃじゃ漏れ」状態か。
あちこち締め直したりして、何度か試すが変化なし。
ポンプ周りの真空配管などはチェックした。
ターボ分子ポンプは、背圧が下がりきるまでは低い回転数
で回っているが、真空度が悪いまま2時間ほど駆動し続けて
いたら、だんだん熱をもってきた。本来、ターボ分子ポンプ
には接触面がないので発熱しない。真空度の低い空気をぐる
ぐるかき回しているから熱が生じているのかもしれない。
この熱で、ターボ分子ポンプの精密な羽根が変形・接触し
て壊れると困るので、夜帰る時は真空引きをやめる。
11月2日(土) 何回か試すが真空は引けず。
ファットセクションの下板のネジが全部緩んでいた。
締め直したが、真空度はよくならない。
* ファットセクションの下板ネジは、固く締めてあったはず
だが、なぜ緩んだのだろうか。断続的な振動?断続的な
真空引き?
11月3日(日) 何回か試すが真空は引けず。
考えられる原因は、
1、Oリングネジ
11月1日に締める際、検出器デュワーとオクタゴン下板
をつなぐOリングネジは、本来のネジでは丈が短かすぎ
るというので、少し丈の長いネジに変えた。
ところが、何箇所かはネジが下まで入らないところが
あった。東北大の工場で加工した時点でネジ穴の深さが
揃っていなかったようだ。
そこで、長いネジが入るところは長いネジを、入らない
ところは本来の短めのネジを使った。もしかすると、
まだ長さの合っていないネジがあってOリングが効いて
ないのかも。さらにOリングにあまりグリースを塗らな
かったので、ごまかしが効かないのかも。
2、検出器デュワー底面の真空ポート
今回はそこに真空ゲージを取り付けたが、取り付け機構
が弱いうえ(4本の爪でひっかけるだけ、それも下向き
、狭い所で六角頭ネジというのも厳しい)、取り付け
にくい部分なので、不安なところ。
月曜になったら人手をかりて検出器デュワーのつけ直しを
しよう。
11月4日(月) 西村さん、小俣さん、鈴木くんに立ち会ってもらい、真空
が引けない状況を検証。
見たところは原因不明。ヘリウムリークディテクタ側の
バルブをほんの少しだけ開けてコンダクタンスを最小限に
したまま、ヘリウムディテクタのポンプを高真空側にして
リークテストをすることにした。
(低真空側(デュワー側)の真空度がかなり悪いため、
バルブをあけすぎるとヘリウムディテクタの安全装置が働
いてバルブが閉じてしまうことが何度かあった。)
かなりおおざっぱなリークテストだが、じゃじゃ洩れを
見つけるには十分。
ということで、リーク探しをしていたら、検出器デュワー
とオクタゴン下板のつなぎの部分に大きなリークがある
ことがわかった。やはりOリングネジか。
本体デュワー上半分は特に問題はなさそう。
夜、鈴木くんに手伝ってもらって、検出器デュワーと
オクタゴン下板の間のOリングネジの交換・締め直しをした。
(単純だけど大変面倒な作業で、夜中までかかった。
鈴木くん、ありがとう!!)
一時的に使っていた丈の長いネジは、ネジ頭のサイズが
わずかに小さく、本来のネジのOリング面に(まさにO
リングが当たるところに)小さいネジ頭による傷がつい
ていた(全24ヶ所中6ヶ所)。この傷が悪さをしていた
かどうかは不明。
とにかく、全て丈の短いネジにして、Oリングにもネジ
にもたっぷりとグリースを塗って締めた。
(このネジのあたるOリング面は、こんど、ブライアンに
簡単に磨きなおしてもらったほうがよいかも。)
あと、検出器デュワーの下面についていたゲージの取り
つけ方法も変えて、きちんとつくようにした。
....ということで、真空引きを再開したところ、最初の
1時間で 3×10-3 Torr (@検出器デュワーの底につけた
ゲージ)までイッキに引けるようにった!祝!
11月5日(火) 真空引き開始から24時間で、 2.5×10-4Torr 達成。
もうちょっと引けてくれると嬉しいが...。
11月6日(水) ヘリウムリークテストを実施。
デュワーの真空度は 2.1×10-4Torrまで引けており、
通常のリークレベル(Heディテクターのノイズレベル)も
1×10-9cc/secで安定。多少のリークがあっても1分ほどで
最低値に戻る。本来のリークテストってこうなのかと感動。
(いつもはノイズレベルが高く、安定するまで数時間かかる。)
何カ所かでリークが見られたが、反応があるときとないときが
あって、何か変。調べてみると、原因はHeディテクタの排熱
ファンからの逆流のような気がする。その周辺についたて
をしてリークテストをするとリーク反応はない。
全体にわたってHeディテクタはまったく反応しなかった。
ということで、全くリークは見られず。
(「全く」ということはありえるのか?)
11月7日(木) とりあえず、引き続き真空を引いている。
72時間で1.8×10-4Torrまで達成。