2005年8月マスク冷却テスト

とうこく

2005年8月28日更新

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このレポートの概要

・マスクの熱収縮率を求めた。拡大率はおよそ1.002である。
  これ以上の精度を求めるにはもう少し解析と実験が必要。
・2005年8月の試験観測では「拡大率=1.0022」を使用した。
・熱収縮率だけをみるとマスク温度は約190K±40Kである。
・チャンネルによって冷却率が異なる。

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作成したマスクと解析方法
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M3ピンホール
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M3領域から適当に選んだ星の位置そのものにピンホールをあけ、
(熱収縮率をかけず、MOIRCS画像にある星の位置そのまま)
冷えた後のマスクのピンホール位置を比べる。パターンは3種類。
ピンホールは直径約30um。

1. 8月に取得した画像を6月の歪み補整データで補整し、
    0.1170"/pixにピクセルスケール合わせをする。
2. ピンホール位置をimexam
3. 2005年1月観測のM42画像から目的天体の位置をimexam
    (マスクは1月に取得したM3画像を1月の歪み補整データで補整し、
    0.117"/pixでピクセルスケール合わせされたものから作成した。
4. ピンホール位置と天体位置をgeomap(rxyscale)で比較
    連続して撮った画像を各2枚づつ解析。

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ピンホールグリッド
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等間隔であけたピンホールグリッドマスクと、冷えた後の
ピンホールの位置を比較。
ピンホールは10mm間隔で直径30um。

1. 8月に取得した画像を6月の歪み補整データで歪みだけを補正する
2. sectractorでピンホールを検出
3. (2.06218"=1mm@カセより) 
    10mm間隔 = 2.06218["/mm]*10[mm]/0.1162["/pix] = 177.4682[pix]  ...ch1
             = 2.06218["/mm]*10[mm]/0.1167["/pix] = 176.7078[pix]  ...ch2
    として換算したピンホール位置をgeomap(rxyscale)で比較
    連続して撮った画像3枚を解析。
4. 1月のピンホールグリッドデータも同様に解析。
    9.2mm間隔 = 2.06218["/mm]*10[mm]/0.116495["/pix] = 162.8573[pix]  ...ch1
              = 2.06218["/mm]*10[mm]/0.116872["/pix] = 162.3319[pix]  ...ch2
    1枚しかない画像を解析。

※モザイク精度に問題があることが判明したので、どちらもチャンネルごとに独立して求めた。

Mask Image ch1 ch2
xmag ymag xmag ymag
2005/08
pinhole
grid
mMCSA02170220,aMCSA02170103 1.002164 1.002313 1.001825 1.002317 全面まんべんなく
各ch=約80個
ロボハンド=110K
mMCSA02170314,aMCSA02170249 1.002144 1.002296 1.001816 1.002308
mMCSA02170411,aMCSA02170347 1.002140 1.002284 1.001798 1.002322
ピンホールグリッドxy方向平均 1.002149 1.002298 1.001813 1.002316
チャンネル平均 1.002224 1.002065
ピンホールグリッド平均 1.002144
m3_pin1 mMCSA05135549,aMCSA05135549 1.002144 1.002501 1.001479 1.001747 全面まんべんなく
各ch=約20個
ロボハンド=110K
mMCSA05135702,aMCSA05135701 1.002135 1.002498 1.001473 1.001744
m3_pin2 mMCSA02165014,aMCSA02165015 1.002520 1.002717 1.001708 1.001944 ch1=10個/ch2=30個
ロボハンド=110K
mMCSA02165150,aMCSA02165149 1.002507 1.002688 1.001687 1.001916
m3_pin3 mMCSA02162907,aMCSA02162852 1.002208 1.002860 1.001418 1.001359 y方向に偏り
各ch=20個
ロボハンド=110K
mMCSA02163056,aMCSA02163033 1.002199 1.002861 1.001415 1.001361
M3ピンホールxy方向平均 1.002286 1.002688 1.001530 1.001679
M3ピンホールチャンネル平均 1.002487 1.001605
M3ピンホール平均 1.002046 ロボハンド=110K
2005/01
pinhole
grid
dmos6Ac,dmos6Bc 1.002894 1.002625 1.002515 1.002398 全面まんべんなく
各ch=約100個
ロボハンド=約107K
検出器交換注意
2005年1月山頂で撮像
※メモ 1、2005年8月試験観測直前のピンホールグリッド画像の解析では、歪み補整 と同時にピクセルスケールを0.1170にした画像を使って解析した。 ピンホールグリッドの熱収縮率がやや大きく出たため、最終的にはピンホール グリッドとM3ピンホールの画像18枚分の平均をとって 1.002152 となり、 マスクの収縮率には 1.0022 を使用した。 2、チャンネルによって収縮率が異なっている。 歪み補整時にモザイクのためにピクセルスケール合わせをしている ことによる拡大率の差? 3、geomapのフィット残差は0.1-0.3pix程度。二つ並べた検出器の短軸方向外側 でフィットがやや悪い。原因は? 4、2005年1月試験観測の解析結果と比べて。 以前のレポートでは2005年1月データを2004年9月試験観測歪み補整で 解析していたため収縮率がかなり大きく計算されてしまっていた。 改めて2005年1月のデータで得た歪み補整を行い、チャンネルごとに独立して 求めら、今回求めたのと近い値がでた。 2005年1月のピンホールグリッドは9.2mm間隔で、2005年8月のマスクとは別物。 ---------- 残差分布 ---------- ・右下矢印が1pix(1pixのズレ=0.8"スリットで15%のロスに相当) ・向き ・「0.1170」はピクセルスケール合わせまでしたもので熱収縮を求めて フィットした時の残差分布。 2005年8月 ピンホールグリッド 0.1170 0.1170 M3ピンホールグリッド パターン1 (m3_pin1) M3ピンホールグリッド パターン2 (m3_pin2) M3ピンホールグリッド パターン3 (m3_pin3) 2005年1月 200501_pin(9.2mm間隔、2005年8月のマスクとは別物) 0.117 0.117 xy各方向での残差分布(ピンホールグリッドのばらつき具合い) ------------------ マスク温度 ------------------ 熱収縮率だけから予想されるマスク温度=約190K。 マスク材質は Aluminum 1100/1145 の合金だがデータがないので、データがあるもので なるべく純度の高い Aluminum 2014 の曲線と合わせている。 2005年4月の小西くんのカルッセル内でのマスク温度測定では約110Kまで冷えている。 ------------------ 考察・メモ ------------------ ・現時点では「拡大率=1.002」程度の精度はでている。 他の誤差を考慮してこれ以上求める必要があるかどうか決める。 (いずれは厳密に求めたいが、とりあえずは天体がスリットに入る範囲の 精度を要求する)。 ・xy方向の収縮率誤差の原因と思われるもの * Scamのピクセルスケールの誤差。 * 歪み補整時にxy方向の平均をとることで生じる誤差。 ※ 歪み補整の手順(鈴木くんの2005年2月19日レポート参照) チャンネルごとにScam画像(1枚のチップ上)の星の位置と比較。 解析的に求めた歪み補整をして各チャンネルのピクセルスケール をx方向とy方向それぞれ求め、平均した値を各チャンネル のピクセルスケールと決めている。 * 1月と6月で使ったScam画像やチップ場所による誤差。 * レーザーのxy方向の精度誤差。 ・8月に撮った星野イメージからもう一度ピンホールマスクを作って マスクイメージを取得すれば誤差が減らせるかもしれない。 ・マスク温度は他の方法でも求めてみる。