2005年9月マスク冷却テスト1

とうこく

2005年9月14日更新

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このレポートの概要

・星の位置を使ったピンホールマスク冷却テストで、これまでと
  全然異なる熱収縮率が求まった。
・一番大きな原因は、歪み補正データが古いせいかもしれないと
  考えられる。検出器のフォーカス合わせで検出器高さを動かす
  と光学系の拡大率が変わる。

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作成したマスクと解析方法
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M15 ピンホール
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ピンホールは直径約30um。

1. 2005年8月に取得した画像を2005年6月の歪み補整データで補整し、
    0.1170"/pixにピクセルスケール合わせしてモザイクする。
2. さちっていない星をまんべんなくピックアップ。
3. y軸反転、ピクセルスケールを 1.12716763 (0.1170/0.1038)倍にしてMDPでマスクデザインし、
    そのままの座標でマスクを製作。
4. マスクを冷やしてイメージ取得。(画像取得は2005年9月9日)
3. 2005年6月の歪み補整データで補整し、0.1170"/pixにピクセルスケール
    し、ピンホールの位置をimexamで検出。
4. マスクイメージのピンホール位置とM15画像の天体位置をgeomap(rxyscale)。
5. 冷却率というのは、星の位置に対するピンホールの位置のmagnifty。
    拡大率というのはその逆数。


Mask Image ch1 ch2
xmag
縮小率
(拡大率)
ymag
縮小率
(拡大率)
xmag ymag
2005/08
M15
パターン1
モザイク画像 0.9925904
(1.007465)
0.9934712
(1.006572)
全面まんべんなく
ch1=25個
ch2=29個
ロボハンド=124K
アルミふた(K-band)
チャンネルごと 0.9922377
(1.007823)
0.9921068
(1.007956)
0.9928055
(1.007247)
0.9921792
(1.007882)
チャンネルごと
(歪み補整なし)
0.9921713
(1.007890)
0.9922379
(1.007823)
0.992096
(1.007967)
0.9926837
(1.007370)
2005/08
M15
パターン2
モザイク画像 0.9924791
(1.007579)
0.9933568
(1.006688)
パターン1の半分
2005/08
M15
パターン3
モザイク画像 0.9926648
(1.007389)
0.9934312
(1.006612)
パターン2の残り半分
チャンネル平均拡大率 1.007704 1.007191
全平均 1.007466
2005/08
PG1657
パターン1
モザイク画像 0.9927073
(1.007346)
0.9937822
(1.006256)
全面まんべんなく
ch1=21個
ch2=22個
ロボハンド=124K
アルミふた(K-band)
---------- 残差分布 ---------- M15ピンホールパターン1 ↓ モザイク画像 ↓ 検出器ごと独立 ↓ distortion補整前の画像で比較(向きは上の画像の-90°) M15ピンホールパターン2 (パターン1を適当に半分) M15ピンホールパターン3 (パターン2の残り半分) PG1657ピンホールパターン1 6月取得 8月取得 6月用歪み補正 VS 8月歪み補正 xmag 0.9999048 ymag 1.000134 xrms 0.2220867 yrms 0.2523612 これらのデータをひととおり見た時点で、検出器フォーカス合わせによって 光学系拡大率(歪み補正データ・モザイクデータ)がかなり変わるかもしれ ないということがわかった(6月試験観測以降は歪み補正データに変更がでる 項目はないと思っていたのが失敗)。なので、早急に8月試験観測直前の 検出器フォーカス合わせ以降に撮った星野から改めて歪み補正・モザイクデータ を求めて、8月取得画像に関してはそれを用いることにする。それはまた 別のレポートにする。 ---------------- 長時間放置実験 ---------------- PG1657パターン1のマスクを焦点面に入れて熱収縮率の時間変化を見る。 アルミふたをしたまま。K-bandで60sec露出。 (画像取得は2005年9月9日) 時間0はマスクを焦点面にいれた直後。 8月取得画像を6月歪み補正で計算したものになってしまっているが 割合としては参考できる。 最初の3時間で0.04%程度収縮率が大きくなっている、つまり冷えている。 それ以上では2日以上たっても大きく変化しない。 カルッセル内での冷却(磁石の力だけ)はロボハンドでの冷却(バネの力で押さえつける) に比べて弱く、マスク到達温度に差があるのかもしれない。カルッセル熱パスは約50K、 ロボハンドは約120K。 ------------------ マスク温度 ------------------ これまでの結果もそうだが、毎回、検出器フォーカス合わせの後の データと歪み補正データを使わないと、温度と収縮率の正しい関係 はでてこないので、今後、再解析する。 ------------------ 考察・メモ ------------------ 細かい数字(実際に確認したもの) 6月画像+6月歪み補正--> ~1 -->8月画像8月歪み補正 6月画像+6月歪み補正--> 0.998254(x) -->8月画像6月歪み補正 0.999535(y)  8月画像+6月歪み補正--> ~1.0035(x1.0022?) -->8月マスク6月歪み補正 8月画像+6月歪み補正--> 1.0075 -->9月マスク6月歪み補正 8月画像+6月歪み補正--> 今週の実験 -->9月マスク8月歪み補正 8月画像を8月歪み補正--> ~1.0005    --> FOCAS画像 8月観測後のピンホール画像を8月歪み補正--> 1.00235  -->10mm間隔を焦点面スケールを2.06218"/mmとして求めたピクセル数と (実際のピクセル数で比較(かなりざっとした計算なので精度悪いです) ・今のところ一番確かと思われるのは(仮定を含まないのは)、 8月に撮った星野を8月の歪み補正・モザイクしてピンホール マスクを作って求めた冷却率と思われる。 (8月の観測以降に焦点面が動いていなければ。) ・先週のマスクテストから得た収縮率の逆数は 1.0075 だったが、 これは8月の観測で得た画像を6月の歪み補正した画像を使った。 同じ画像を8月の歪み補正してからもう一度同じ星でピンホール マスクを作って実験する予定。ピクセルスケールの比の問題だけなら、 同じくらいの結果がでると期待したい。 ピンホールは ・星と同じ位置(収縮率=1、直接収縮率を求められる) ・先週の結果の1.0075だけ拡大率をかけたもの(星の画像と 一致するか直接確認できる) の2パターン用意。 ・整合がとれない部分が残るとすれば、あとは収縮率の精度の問題や、 マスク設計&加工の段階の問題で、それらもまだ多少含まれていると 思われる。とにかく歪み補正データの件で見直す必要のあるところが 多々ある。 ・それでも解が二つ以上でるようなら、9月観測用にはいくつか異なる 収縮率パターンでマスクを作って入れる。(SSA22/4C23.56/M15/+α)。