光学ベンチのつりさげ構造に関する計算  [！まだ書いてる途中！]

tokoku

Jan  6, 2001 up
Dec 20, 2001
Dec 17, 2001


□ イントロ

光学ベンチにぶらさがるもの、レンズ、マウント、バッフル、フィルタ/グリズム
ターレット、検出器とその周辺機構、これら総重量（予想）は、約300kg。
（重量の詳細は、一番さいごの「参考」を参照してください。）
これを、熱流入をなるべく減らしながら、光学系の結像精度を維持するように
デュワーの中にきちんと固定する（つるす）方法を考えます。

まず、手計算で簡単な確認。
長さLで一様な断面積Aの板をつるし、その下に荷重Pを加えたとき、
板の自重を考慮して、板に生じる応力を求めてみます。
   

これより、G10ストラップに生じる最大応力を求めます。
荷重Pは300kg、G10の断面積Aは3mm×30mm、G10の密度ρは1.88kg/m3とする。
実際には荷重に対して、板自身の重さによる効果は十分小さいので、
上式の第２項は無視できる。



ちなみに、G10の引っ張り強さは約300MPa、降伏応力は約6GPa。
この手計算だけみると、常温で装置を垂直にぶらさげているだけなら
G10ストラップの強度は安全率が10倍以上になって、引きちぎれることは
ないように思われます。

また熱応力σについては、板の大きさに関係なく求まります。
ヤング率をE、熱膨張係数をα、応力がかからない状態（ここでは常温）と冷却
したときの温度差をΔTとすると、



それぞれの値をいれると（E=23.8GPa、α=5.7×10-6/K、ΔT=216K）、
板に生じる熱応力は29.3MPaとなります。



□ 解析

次に、光学ベンチをつりさげる構造について強度計算をおこないました。

解析は２種類あります。

１）強度解析：装置をいろんな方向に振って、重力によるベンチ各部のたわみ
    がつりさげ方によってどれだけ変わるかをみる。
２）冷却解析：光学素子を含む光学ベンチ全体を冷却し、全体のなかで
    とくにつりさげ部分にどれだけ熱応力がかかるかをみる。

本来は、両方を同時に解析にかけるべきですが、この２つの解析は
性質がまったくことなるため、不可能です。
しかたないので、別々に解析して傾向をみるというやりかたをしました。


[解析条件]

材質：ベンチ Al6061
      ストラップ glassfiber epoxy G-10
物性値：（※）物性値は77Kのものを使用した
        Al6061  密度  2.7×103 [kg/m3]
                ヤング率  70 [GPa]
                ポアソン比 0.3
        G-10    密度  1.88×103 [kg/m3]
                ヤング率 23.8 [GPa]
                ポアソン比 0.12
       （物性値は、Al6061についてはアルミ技術情報(日本軽金属(株))、
         G10についてはNISTの資料とMcLeanのテキストから引用。）
環境：真空、低温
拘束条件：
荷重条件：


               図１ モデル（絵は基本型うちまた）

つりさげ方の構想は、
１）光学ベンチの上部と下部に足をつける。
２）常温の状態で、装置をどの方向に振っても、たわみは小さく同じ程度になるよう
    にする。またそのとき、各ストラップに生じる応力は極端に大きくならないよう
    にする。
３）冷却時は、熱収縮の中心が上部にくるようにする。下部は上へすんなりと移動し、
    下部のストラップに無理な力がかからないようにする。
４）上をふまえると、基本としては、上部にはZ方向とXY平面方向に維持する構造、
    下部にはXY平面方向に維持する構造、をつくればよい。

以上をふまえて図２のようにいくつかストラップの形状を考えました。
ピンクでハッチングをかけた部分がストラップ。１から４までは、XY平面方向に
維持するストラップ、５と６はZ方向に維持するストラップ。
各ストラップは、幅30mm、厚み3mm。長さは短いものでも80mmは確保。


                                図２ ストラップの形状モデル


□ 結果

結果として、各モデルの各状態での様子を一覧にあげる。
z方向は垂直に静止しているとき（光軸方向＝重力方向）、x・y方向は
それぞれ図１の座標のx・yの向きに90°倒したときを指す。
ストラップの材質（G10）の降伏応力は6.2GPa。