三菱放電加工機 初級トレーニング報告

2003年4月23日  東谷


MOIRCSのスリットマスク加工のため、三菱電機放電加工DIAXU.S.A.)の
形彫放電加工機VA10を購入しました。このVA10の基本操作法などを教わる
初級トレーニングに参加してきたので報告します。
MOIRCSのスリット加工はさらに「細穴加工オプション」を使うのですが、今回は
このオプションについての講習はありませんでした。5月以降にハワイの山頂で実機を
使っての講習が行われる予定です。

講習  :  2003年4月14〜17日(4日間) @三菱EDM(シカゴ)
参加者:  小俣、東谷

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以下の本は、三菱電機の人が書いたもので具体例もわかりやすく、放電加工を知る
のにオススメです。すばるの図書室にあります。
・機械加工現場診断シリーズ5「形彫放電加工」 眞鍋・葉石(日刊工業新聞社)

    
講習は、教室での講義と実機での実習が半々。生徒は全部で5人でした。
左の写真が先生の Margarito Cortez で、放電加工機開発に携わる技術者です。他の生徒は、
放電加工を24時間稼働させて1分いくらの生産性を要求するような機械加工技術者たちです。


  
実際にMOIRCSで使うことになるVA10という機種で実習しました。


     
加工を始める前に、まず電極と工作物の位置決めを正確に行っていきます。

位置が決まったら、電極材質、工作物の数、加工形状、必要な仕上げ精度などを制御画面に入力
していくと必要な電圧や電圧パルスの間隔からファジー工程まで全てソフトが計算してくれます。
細かい値をマニュアルで変更することもできますが、考慮すべきパラメータが多いので、経験が
ないと難しいです。


    
薄い黄緑色の加工液(第三石油類の油)に十分浸し、電極を工作物まで数ミクロンのところまで近づけて
数マイクロ秒の高周波数で電極に高電圧をかけていくと、あるところで加工液の絶縁がやぶれ、電極と
工作物の間に放電が起こり、その熱エネルギーで工作物側が溶融していきます。放電電流が流れ込む周辺
は3000℃にもなり、周辺の油が気化する勢いで溶けた金属カスが周囲の油の中に吹き出されます。

中央の写真では、放電している火花や油が気化した煙が見えています。右の写真は、加工中の制御画面で、
データ(加工の速度や進み具合い、精度、電流の安定度、電極の座標や軌跡など)が表示されています。

何度も手順を間違えてやり直したおかげで、VA10の基本動作はだいたい習得できました。


  
こんな感じに加工できます。電極の形は様々です。一回で全ての形が彫れるものと、揺動加工
(電極を円弧や四角に動かして形を彫る)するものがあります。
たとえば、放電加工で一番大きな加工は車のバンパーなどだそうです。


    
オフィス内の他の設備も見せてもらいました。
左の写真は、これまでの歴代の放電加工機置き場です。古機種のユーザーから問い合わせがあると
ここに来て動作確認したりするそうです。右の写真は最新機が並んだショールームです。中央の
写真は電極交換も全て自動でこなす最新放電加工機です。


  
スクリュー型の電極(見えにくいが写真左上の黒いのが電極)で彫ったボルト穴。電極一つに対して
工作物が複数ある加工をマルチワークピース加工と呼びます。他にも加工物が陳列してあります。