液体窒素予冷システムの製作
2003年5月25日 とうこく
予冷配管を作りました。後づけ機能ですが、本質的な機能になるはずです。
一度でうまくいくかはわかりません。
製作方針
・銅のパイプと銅板を銀ろうで固定し、その銅板を上側のバルクヘッドに固定する。
銅板は、熱伝導がよく工作性が非常に良いテルル銅を使った。
銅パイプは結果的に水道用の薄肉パイプを使うことになったが、長期的に見てこれでいいかは不明。
・銅のパイプと液体窒素導入用フランジ(フィードスルー)をステンレスの蛇腹でつなぐ。
・管の接続部はできるだけ少なくし、市販の継手を使うか銀ろうづけをする。
・継手はSwagelok(Japan)社製の「1/2インチのVCR」規格に統一する(CIAOやCOMICSに合わせる)。
上から見た概念図(クリックすると拡大できます)
青が光学ベンチ等、緑が銅板+銅パイプ、赤がフレキシブルホースとフランジ。
実際にはホースは3次元的に走っているので絵だとわかりにくいが、左にある
フィードスルーから入った液体窒素は、まず図の下のほうに見える長いホースを
通って右側にある銅パイプに入り、上のほうに見える短いホースを通って、左側
の銅パイプに入り、最後に長いホースを通ってフィードスルーの出口から出る。
製作経過
VCR継手。VCRはステンレス製のオスナットとメスナットの組み合わせで、それぞれ
鏡面仕上げされたエッジにメタルガスケットをくい込ませることでシールする。
写真は、左がオスで右がメス。
*メタルガスケットは銅やステンレスのものがあり、一回ごとに使い捨てということに
なっているが、経験的には真空テストくらいなら何度か使っても大丈夫のようだ。
銀ろうづけ箇所は最小限にしようと設計したが、銅パイプを曲げると強度が悪くなるのと、
くねくねしたパイプが平面に収まらなくなる(平面の板に銀ろうづけしにくくなる)ため、
水道用の壁厚の薄い直線パイプと90°と45°のエルボーを使って蛇行させた。
フィードスルーを、それがくるはずの位置に固定して、ホースの配管を決める。
VCR継手は、向きが数ミリ・数度ずれると、はめられなくなる。
ホースの向きに合わせて、パイプの溶接箇所の長さや角度の微調整を繰り返し、ひとつできるたびに
真空テストとヘリウムリークテストを行った。
パイプの配置がだいたいできたところで、デュワーの上半分をかぶせて垂直G10をとめ、
フィードスルーとホース先の位置が合うか、デュワーを組み上げた後に継手の締めつけが
できるかどうかを確認。取りつけるときは、フランジを外し、フランジ穴からホースを外
に引き出して締めつけるため、ホースは比較的自由度があるようにし、またフランジを
閉めたときに長いホースがデュワー壁に接触することがないよう、ホースの向きを微調整した。
いろいろ試した結果、長いホースに変更することになり、また銀ろうづけや真空テストを
やり直した。
この微調整ではブライアンが根気よく銀ろうづけを繰り返し、土日もフルに働いてくれた。
ようやく最終的な配管が決まった後、パイプを超音波洗浄器で洗っているところ。かなり汚い。
ヒートガンを当てたり、大型真空チャンバーの中で大きなヒータの上に載せて軽くべーキング
もどきをやってみたりもした。
気づいたところ・改善するべきところ
<注意>ここの部分は、実験後のミーティングをやったら書き加えます。
(1)もっといいホース配線方法があるだろうか?
たとえばフィードスルーにつなげて締める時に、もっと楽にできる方法とか。
(2)フィードスルーの2つの出入口は、CTI冷凍機との接触を避けるために
VCRの90°エルボーで両側へ曲げる。
(3)フィードスルーより外側の備品をMOIRCS用に用意する。
・VCR-KFフランジ変換アダプタ(乾燥窒素、真空引きなど気体用)
・VCR-Swagelok変換アダプタ(液体窒素など流体用)
(4)液体窒素用流量計(LN2レベルコントローラ)をつける?
(5)バーストディスク?をつける?(パイプ内の急激な圧力上昇を抑える)
(6)オクタゴン壁のフィールドスルーを取りつける面の隣に、アクセス用の
穴をあける。