Jグリズム高分解能化
2010年2月4日更新


・グリズムで高分散化するためには、屈折率の高い材質を使うこと。
・視野をケらないためと、ルーリング加工の制限のため、プリズムの頂角には限界がある(〜40°)。
・大きな頂角になると、大きなブレーズ角が必要になる。
・赤外線域で「透過率が高く」「屈折率が高い」材質は限られている。KRS5、Ge、Si、ZnSeなど。
・加工方法としては、ダイレクトルーリング、エッチングなど。
・材質の機械的特性(硬度など)、熱的特性(熱膨張係数など)、材質(ガラス、結晶、多結晶など)の素性。
・Geは屈折率4.0879@2.2um。透過率は0.5以下で低い。透過領域は2-10umで、J-bandは透過しない。
・EMIR@GTCのグリズム。ZnSeにダイレクトルーリングで作ってみたけど難しかった。
 結局、Pseudo-grismでR=5000(J)、4250(H)、4000(K)を達成している。
 平面のグレーティング(FS)をプリズム(ZnSe)でサンドイッチに並べてグリズムのように使う。
 平面グレーティングはJobin Yvon製。
 各素子の間には空間がある。低温での接着剤の問題がなくなる。グレーティング基盤材の選択肢も広がる。
 迷光はないか?
・名大でZnSへの微細溝加工に挑戦。精度的には微妙。

材料調査(n>2のものだけ)   メモ:透過率と屈折率は反比例
材質名 屈折率 透過率 熱伝導率
[W/cm/K]
比熱
[J/g/K]
線膨張係数
[1/K]
ヤング率
[GPa]
ヌープ硬度
[kg/mm2]
密度
[g/cm3]
ポアソン比 メモ
BaF2 2.413@0.85um
2.388@3.24um
80%@3-10um 11.72 0.41@300K 18.1E-6@173-473K 53.07 ヌープ硬度 4.89 0.343 熱ショックに弱いので冷却注意。
ZnSe 2.4609@1.4um
2.4437@2.2um
70%@1.5-14um 0.18@293K 0.356 7.57E-6@293K 67.2 105-120 5.27 0.28 多結晶。粉末は毒性。強酸に弱い。J-bandでは使えない。
ZnS 2.275@1.4um
2.263@2.2um
>70%@3-10um 0.167@293K 0.469 6.8E-6 74.5 210-240 4.08 0.27 硬度高い。軍事用など。脆性材料。
KRS-5 2.4462@2um 65%@0.9-25um 0.544@293K 0.2@273K 58E-6?? 15.85 ヌープ硬度 7.371 0.369 透過率高い。混晶。比較的軟らかく光学研磨に対しては十分な硬度がある。
Si 3.49@1.4um
3.45@2.05um
50%@1.2-5um 163.3@273K 0.703 4.15E-6 131 ヌープ硬度 2.33 0.266 コーティングなどがしやすい。
GaAs 3.34@8um ~50%@1-11um 55@300K 0.318@273K 5.7E-6@300K 82.68 ヌープ硬度 5.32 0.31 吸湿性なし。水蒸気・酸などと反応して有毒なアルシンを発生するので取扱注意。
参考文献 ・II-VI応用光研Neotron 今のところ考えられる手段(優先度高い順) 1)EMIR式に、板のグレーティングとプリズムを組み合わせる。   (メリット)特殊な技術や開発要素がない。   (デメリット)・マウントが少し大変。          ・面数が増えることによる効率ロス。迷光。          ・依然として高さ方向に制限があるので注意。 2)改良した方法で(市川・市山VPH-Jとは異なる方法で)VPH-Jを作ってもらう。   中嶋さんの進路に大きく影響される。   VPHのサインカーブ的な透過曲線は、広視野多天体分光装置には馴染まない   (視野の位置によって透過曲線がシフトするため)。   ただしJバンドは幅が狭いため、感度幅の広いVPHを作ればなんとかなるのではという期待がある。 3)ZnSeで削る方法を再検討する。東北大工学部ナノテクに相談する。開発時間がかかる。 メモ ・余っているZnSeプリズムがあるので何かの試験に使える。MOIRCS用サイズ。  ただし、内部異物があり全体的に不透明感のある不良品。