試作フィルタの試験についてメモ
2009年7月2日 東谷

松原さんに直接質問して聞いたことも含めて書いています。


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放射線試験
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・宇宙放射線を浴びることで懸念されるのは、焼けて色が変わる、つまり透過曲線が変わること。基板の変化?膜の変化?

・放射線レベルは地球周回軌道とL2では大きく異なる。
 → 太陽放射線と銀河放射線がある。地球周辺はヴァン・アレン帯に守られているため、極地方の一部をのぞけば
   放射線は比較的少ない。一方、L2は宇宙線に曝されている。

資料:
  ・JWST Radiation Environment (2003)
  ・The Radiation Environment for the NGST (2000)

  ・1次的な放射線は銀河宇宙線と太陽宇宙線。(太陽活動周期と連動する)
  ・2次的な放射線は衛星をとりまく物質と宇宙線との相互作用により生じる。エネルギー幅は限定的。
  ・Transient粒子:銀河宇宙線(TeVレベル)と太陽宇宙線(GeVレベル) →プロトンやもっと重イオン
  ・Trapped粒子:数百MeVレベルのプロトン、10MeVレベルの電子、数百MeVレベルの重イオン
  ・L2における1次的放射線は約5ions/cm2/s。
  ・L2における2次的放射線は望遠鏡ハードウエアの設計に依る。

 → SPICA用に調べたL2環境データは和田さんが詳しいので今度改めて聞くことになった。

・AKARIでの試験は原子力研究所で行った。電子を当てた。プロトンはやってない。

・rad:単位あたりの物質が放射線を吸収し発生したエネルギー。
 1 rad = 0.01 J/kg


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熱サイクル試験
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・打ち上げられると数分でどんどん減圧され温度も下がって宇宙空間に出るので、太陽を見る向きに向いたとしても
 それほど温度上昇はないのではないか。打ち上げ時の時間帯にもよる。せいぜい室温?
・もう少し調査。


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急減圧試験
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・急激な減圧試験も必要。
・懸念されるのはフィルタ膜の剥離。
・SPICAでも試験方法を検討中。数分で高真空になるようなシステムを用意できるかどうか。


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フィルタホイールについて
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・AKARIはフィルタホイールを採用。
   ・フィルタサイズは〜1"。
   ・フィルタのマウント方法は慎重に検討する必要がある。打ち上げ時の振動+熱収縮の両方に耐えないといけない。
   ・スプリングはこんな感じ↓。上辺はテーパーが切ってあり、光軸方向とradial方向を同時に押さえている。
    しかもセルフセンタリング。設計ジェネシア。大きさは厚み方向で5mm程度。
    
・位置のセンスにはポジションセンサ(フォトセンサ)を1個つけ、原点からのステップ数で制御。
 メカニカルセンサでもよいだろう。


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そのほか
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・冷却モータは使っている。AKARIの場合は住重製。
・副鏡の調整は打ち上げて最初の1回は必ず行う。宇宙環境で数Aの電流を流すことは漏電などの大きなリスクが伴うため、
 最初の1回はやむをえずやるが、その後は極力やらない。AKARIでは、LHe消費後のNIR観測フェーズになる際に、焦点合わせを
 検討したが、結局行わず。