MOIRCS サポート構造・強度解析 1
2002.5.31 update
2002.5.28
2002.5.22 tokoku
□ 解析
全体のサポート構造の強度解析を行った。
この解析の目的は、光学ベンチのたわみを公差以内におさめるような
デュワー構造のめどをたてること。
望遠鏡を振ったときのデュワー壁のたわみによって生じる、光学ベンチの
各サポートストラップ位置の各変位と、ストラップ自身のたわみによる、
光学ベンチの各位置の各変位の合成で、実際にベンチがどの程度たわむか
を見積もり、そのたわみが小さくなるような構造のめどをたてる。
全体のコンセプトは、図1の通り。
全体 上から
サイド1 サイド2
図1 コンセプト
解析条件
材料:
アルミニウム(常温) デュワー、中身(光学ベンチ、その他ウェイト)、
サポート構造の腕
ステンレス(常温) サポート構造の上下の輪、ゲートバルブ、直線導入器など
G10(77K) 光学ベンチのサポートストラップ
物性値:
材料 |
材質 |
質量密度 |
ヤング率 |
ポアソン比 |
アルミニウム(常温) |
Al6061 |
2.68×103 |
68.2×109 |
0.332 |
ステンレス(常温) |
SUS304 |
8.0×103 |
197×109 |
0.29 |
G10(@77K) |
Epoxy Glass-Fiber |
1.88×103 |
23.8×109 |
0.12 |
注意)光学系サポートのG10ストラップは、実際には低温で固定されるので、
G10だけは低温での物性値を使いました。
拘束条件:
サポート構造の上の輪だけを3方向拘束
荷重条件:
重力のみ(重力方向-z、x、yの3つについてそれぞれ解析を行う)。
・g=-z は、デュワーがまっすぐ立った状態
(カセグレン焦点面が上を向いている)
・g= x は、二つの光学系が上下になっている状態
(光学ベンチの面が上を向いている「ー」)
・g= y は、二つの光学系が横に並んでいる状態
(光学ベンチ面が縦 「|」)
各座標は図1で示してある座標のこと。
コメント:
デュワーの中身は、ほぼ全てのものが実際に近い重さを持って、
実際に近い場所に配置されている。
全体を解析したうえで、光学ベンチのネジ止め個所(図2)について、
変位データをみる。
図2 光学ベンチのネジ止め個所
□ 結果
装置を各方向に振った(荷重方向を変えた)ときの結果は以下のようになった。
図3 変位分布のようす
変位が一番大きいのは、サポート構造の下部にある、円環の長い部分。
図4 応力分布のようす
もっとも強い応力がかかるのは、上下サポート構造の根元部分。
上の結果から、光学ベンチの部分だけとりだして、変位分布のようすをみると
以下のようになった。
濃淡の表す大きさは、それぞれの図で異なる(同じ色でも変位量の大きさは違う)
ので注意!点線は変位の様子をおおげさに描いたもの。
単位はメートル。
詳細な数値データはこちら。
g=-z のときの変位分布のようす↓
g=x のときの変位分布のようす↓
g=y のときの変位分布のようす↓
図5 光学ベンチの変位 (3方向)
□ 考察
-------- 結論 [西村] May 29, 2002 ---------------------------------
東谷レポート「デュワーサポート構造の解析について」結果を読んだ
私の結論は次ぎのとおりです。結果に方向が記していないので、これを、
X, Y, Z 方向の worstcase が示されているものと解釈しています。
1.G10の上部取りつけと、下部取りつけ位置で最大40ミクロンの変位
の差があり、これは、1メートルのスパンに対して、10秒になり、MOIRCS
光学系と、望遠鏡光学系との傾きのデュアー寄与分としては十分小さい。
2.カルセルーマニピュレータ方向は、最大 100 ミクロンのサグがある
が、焦点面に、直接、影響する焦点箱の変形は 10 ミクロン以下であり、
焦点面への影響は無視できる。しかしながら、カルセル取りつけ面が繰り
返し変形することは出来れば避けたいので、カルセルとデュアー本体か、
カルセルと望遠鏡取りつけフランジの間にブレースを入れたほうが良か
ろう。また、これにより、上記、1の、40 ミクロンは更に減ることが
期待できる。
3.取りつけ部の応力は、最大 4MPa 程度。現状の 2.25 inch diameter
を保持すれば、アルミ材でサポートを製作しても問題はない。(この結論
には余り自信ありません。)
この結果により、小俣さんには、この支持方式が他の機器の装着、格納と
干渉しないかを、彼の IDEAS モデルを使用して、継続検討すること、また、
この結果を待っていた Steve には、小俣さんからの情報を取り入れながら、
支持部の製作図面の作成を再開するように伝えたいと考えます。
-------------------------------------------------------------------
上の結論に対するコメント
1、
2、
3、サポート材について。この解析では直径50mmのステンレスを使用。
サポート材をアルミで作ることの欠点はないか?(温度変化が大きいとか)。