光学ベンチ冷却実験 --前半--
Tokoku
Dec.20, 2002 update
Dec.10, 2002
実験
今回の実験は、光学ベンチ全体を冷却することが主な目的。
これまで2回、光学ベンチ冷却実験を行ったが、冷凍機のパワーよりも
デュワー壁からの熱輻射のほうが大きいために全然冷えない、という
結果におわっていた。
そこで今回は、スーパーインシュレーションで光学ベンチ全体をくるみ、
さらに熱パスもパワフルにして、再度冷却を試みる。
◆ スーパーインシュレーション
鐘紡化学工業製で、「両面アルミ蒸着ポリエステルフィルム(厚み 9um)」と
「ポリエステルネット(厚み 193um)」の2種類のシートを交互に重ね合わせ、
普通の糸でごく軽く縫い合わせたジャケットをつくった。
◆ 熱パス
厚み 150um、幅 38mm、長さ 245mm の無酸素銅のシートを計52枚使う。
これを2枚の銅板でおさえつけてネジどめする。
無酸素銅の熱電導率を 400 W/mK とすると、熱パスの熱輸送量は以下のように
なる。ちなみに冷凍機第一段のパワーは、第2段を使わない(今回の)場合で
約80W@80Kである(住重参考ページ)。
例えば、ベンチが常温+冷凍機が77Kのとき256W、ベンチが100K+冷凍機が70Kのとき36W。
◆ 温度計
温度計は、白金抵抗温度計を8個使い、温度をモニタした。
Lakeshore340/3468ボードを使って、一台で同時に8箇所をモニタ
できるようになった。
T1 |
カメラ#5と6の間のマウント cam #5-6 |
T2 |
熱パスの根元(サイドウォールについたアルミ板) heatpass |
T3 |
スーパーインシュレーション superinsulation |
T4 |
光学ベンチ一番下 bench(btm) |
T5 |
コリメータ#1のマウントのてっぺん col #1 |
T6 |
光学ベンチ一番上 bench(top) |
T7 |
光学ベンチ中央 bench(center) |
T8 |
コリメータ#2のマウント col #2 |
◆ 今回の実験の様子
* 光学ベンチの組み込みレポート(2002年12月10日)はこちら
結果
・真空引きを始めてから、78時間で 真空度は 3×10-3Torr になった(デュワー底に
つけたゲージ)。そこから冷却を始めた。
・冷却を始めてから、10時間に約5-7度のゆっくりしたペースで温度は下がり続けた。
ベンチの温度は全体的にほぼ均一だった。(下のグラフを参照↓)
・冷えるペースがゆっくりのまま変わりそうにもないので、冷却開始から94時間で
冷却実験をいったん停止した。
・温度変化は以下のグラフの通り。真空度は最高で 1.1×10-6Torr まで到達した。
考察・メモ
1、熱パスの根元が180K程度までしか下がらないということは、冷凍機のコールド
ヘッドから熱パス根元までの3つの接続部に問題があるのだろうか?
冷凍機から光学ベンチまでの熱の道は、以下のようになっている。
冷凍機ヘッド
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冷凍機側コールドプレート(アルミ板)
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銅シート
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ベンチ側コールドプレート(アルミ板) ←温度モニタ
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ベンチ側軽量化穴補強板
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サイドウォール
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光学ベンチ
各間はすべてネジどめ。
改善策としては、溶接できる箇所は溶接にする。この改修は簡単ではないので、
2003年1月以降に行う。
2、次回の実験では、とりあえずベンチを外さないで手の届く範囲でできる
改善策をとる。
1)スーパーインシュレーションの一番内側の層をもっと積極的に冷やす。
今は、ベンチからパスをとっているが、これだとベンチが冷えないと効果
がでないので、冷凍機ヘッドの近くからパスをとり、先にスーパーインシュ
レーションが冷えて、輻射の効果が大きくなるようにする。
2)また、スーパーインシュレーションの隙間をなくし、常温のデュワー
内壁をみる量を極力減らす。(今はまだ少し隙間がある。)
3)冷凍機のヘッドに近い場所をもう一カ所、温度モニタする。
(熱パスの温度勾配を知る。どこで熱抵抗が大きいか把握する。)
3、スーパーインシュレーションの作る際のメモ
糸で2センチ間隔ステッチなどに軽く縫っていくとよい。
10層にもなるとけっこうな重量になるので、あまり緩く縫うとだれる。
でもあまりきつく縫うと熱伝導してしまうので、気をつける。
くくり縫いはだれるのであまり良くない。
少しでも切りかきがあると破れるので、縫うラインだけカプトンテープで
補強するとか、、、何かアイデアを考える。