光学ベンチ冷却実験 [ 後半 ] 2002年12月23日-2003年1月3日
Tokoku
Jan.31, 2003 update
Jan.10, 2003
Jan. 3, 2003
実験
今回の実験は、光学ベンチ全体を冷却することが主な目的。
[前半]では、あまり冷えなかったので、いったん冷却を中止し、以下のような
工夫をして、再度冷却テストを行った。
1、スーパーインシュレーションの隙間を極力なくす。
2、スーパーインシュレーションの一番内側を極力冷やす。
3、熱抵抗の大きな箇所を探す。
基本的な設定は [前半] と同じ。
温度測定場所は以下の8箇所。前回より一部変更して、熱パスの前後を測定する。
(1)熱パス冷凍機側(Coldhead)
(2)熱パス光学ベンチ側(Heatpass)
(3)スーパーインシュレーション(Superinsulation)
(4)光学ベンチ一番下(以下全てBench/Mounts)
(5)コリメータ#1のマウントのてっぺん
(6)光学ベンチ一番上
(7)光学ベンチ中央、コリメータ#2のマウント
結果
・真空引きを始めてから、67時間で 真空度は 3×10-3Torr になった(デュワー底に
つけたゲージ)。そこから冷却を始めた。
・冷却を始めてから、10時間に約5-7度のゆっくりしたペースで温度は下がり続けた。
ベンチの温度は全体的にほぼ均一だった。(下のグラフを参照↓)
光学ベンチの温度は、240時間で190K前後まで下がっただけだった。
・温度変化は以下のグラフの通り。真空度は最高で 7.2×10-7Torr まで到達した。
考察・議論・メモ
1、冷え方(Cooling Rate)は、[前半]の実験とほとんど変わらなかった。
2、大きな問題は2つ。
(A)銅ストラップの両端(Coldhead、Heatpass)に60K以上も温度差がある。
(B)冷凍機に一番近い温度計の温度が85Kもある。
(A)について、冷却後にデュワーを開けると、銅シートを押さえるネジが
たいていは緩んでいる。また実験前にネジを締める段階で、押さえ方
として不足がある感触があった。
(組み上げ段階でデザイン的な問題に気づいた。)
デュワーの構造上、熱伝導にとって肝心な場所のネジをいちいち取りつけ・
取り外ししなければならないので、他の装置のように何度か冷却しながら
増締めをしていくことができないので、工夫が必要。画期的な案はないか?
議論の末、ひとまず、組み上げに支障のない箇所は全て溶接、または
銀ロウづけにすることにした。けっこう難しいかも。
(B)については、スーパーインシュレーションの効果が足りていないこと
が挙げられる。
今回は比較的ラフなスーパーインシュレーションで、一番内側の層の
冷却の仕方などが完全に不足していた。(内層の冷却について最初から
きちんと考えていかなったから。)
注)ジャケットはいくつかにわかれている。グラフの「Superinsulation」
は光学ベンチから冷却パスをとったもので、冷えなくて当然の箇所。
一部はコールドプレートから冷却パスをとった層もある(が、そこの
温度はモニタできなかった)。
今回のような、デュワー内壁にインシュレーションをつける方法だと、
今以上に層数を増やすことは無理(隙間がない、組み上げられなくなる)
だし、内側層を冷やすのもやや難しい。
次回は以前の設計通り、光学ベンチにスーパーインシュレーションの
ジャケットを着せて、内層をきちんと冷やし、多層膜断熱効果を発揮
させるという方針で全部作りかえる。
3、冷却のシミュレーションをもう一度やってみる。
ラフに、スーパーインシュレーションが理想的に効いた場合に冷凍機一台だけの
パワーで足りるのかどうか見積もる。
4、1週間でおよそ190Kまで下がった。77Kで安定させるにはあと120Kくらいは冷やさ
なければならない。かなり大掛かりな改修か、もしくは(やはり)液体窒素での
予冷システムが必要になるだろう。
どちらにしても、今回の改修期間中に具体的な設計をして、必要部品を揃える。
3、4については、いくらか見積もり・設計を行って、1月中くらいにもう一度
議論をしたうえで方針を決める。
5、実は、[前半]の実験のあとにデュワーを開けた際、ベンチ側コールドプレートを
サイドウォールに取りつける部分(サイドウォールの軽量化穴補強板にネジで
とりつけた部分)のネジがゆるゆるに緩んでいた。その時は、これが温度が下がら
ない最大の原因だろうと考えた。
が、今回そのネジを締め直したが、劇的な改善にはなかなかった。
手が届かないところなので、完全にネジが締められていない可能性は十分ある。
この箇所を溶接することで解決できるか検討する。
(ここがきちんと接触していなければ、サイドウォールが冷えないので、その先の
ベンチはなおさら冷えない。)
6、次回の冷却実験では、まだレンズ等の光学素子は載せない。