続・アノダイズマスク冷却テスト    とうこく
2007年4月3日


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目的
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2006年12月のアノダイズマスク冷却テスト の【実験1と2】と同じことをアルミマスクでも
行い、実験と解析を同じ条件にして、マスクの収縮率を比較する。

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結果
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実験日                 2007年2月7日 16:50頃にマスクインストール
実験開始時マスク温度   116K
カセグレンフランジに付き、カセグレンふたをみていた。

解析方法は、2006年12月のアノダイズマスク冷却テストと同じ。
星をreference、ピンホールがinputとしてgeomapでmagnify求めている。(1以下ならマスクは冷えている。)

赤●   アノダイズマスク 2006/12/22 マスクインストール時の温度=122K  アルミふた
青○   アルミマスク     2007/2/7   マスクインストール時の温度=116K  カセグレンふた
黒点線 現在使用している収縮率の値。算出時(2005年9月)はマスク温度未測定だが、冷却開始から92時間後と
       2週間後に測定。焦点面に入れた直後の測定値。おそらくアルミふたを見て撮ったと思うが、記録なし。




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考察
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●温度差
材質の正確な熱収縮率データはないが、アルミの線膨張係数はおよそ23E-6。
温度が20K違うとき、4000 pix の両端では

4000 [pix] x 23E-6 x 20 [K] =  1.84 [pix]  ......(1)

のズレができる。


●熱収縮率の差
今回実験で求まったアルミマスクの収縮率は(焦点面に入れてから5時間分の平均として)0.994543。
拡大率にすると、1.0055。これを現在の1.006で作った場合、視野の両端では、

4000 [pix] x (1.006-1.0055) = 2 [pix]  .......0.23"に相当

のズレができる。本来より大きく拡大していることになるので、観測時には導入星ホールが
外側にずれる。つまり、導入最終時のベクトルが中心に向かうmagnifyを示す傾向は説明できる。

以前に求めた熱収縮率と差がある理由はわからない。以前に1.006を求めた頃はマスク温度を
モニタしていなかったので、当時の正確な温度はわからない。今回の実験時、モニタ用マスク温度は
最も冷える時よりは15K以上高いのでその差も考えられる。
また過去のテストは、マスクを焦点面に入れた直後のデータだけで収縮率を求めているのも
原因の一つと考えられる(入れた直後が一番収縮率が小さい傾向があるため)。


アノダイズマスクの収縮率は(焦点面に入れてから5時間分の平均として)0.995005。
拡大率にすると、1.0050。これを1.006で作った場合、視野の両端では

4000 [pix] x (1.006-1.005) = 4 [pix]  ......0.46"に相当

のズレができる。また、Akiyama et al.開始時、モニタ用のアルミマスクは131Kで、
アノダイズマスクの冷却テスト時より約10K高いとすると、
(アノダイズマスクの温度は実際にはもっと高い可能性があるが、)

4000 [pix] x 23E-6 x 10 [K] = 0.92 [pix]

より、さらに約1pixのズレがありうる。

よって、Akiyama et al.で見られたズレのうち、拡大していた6pix程度のうち5pix分くらいは説明できる。


●マスク材質の差
アノダイズマスクが実際に冷えていない、もしくは冷えるのが遅い、ということは考えられる。
安定した収縮率に到達するまでの時間は測定していないので、調べる必要があるだろう。

一方、上の実験結果を見ると、焦点面に入ってからの収縮率の変化はあまりなさそう(つまり
輻射を受けて暖まる割合は気にしなくてもよさそう)。ただし、アノダイズマスクのテスト時
はアルミふたを見ていた(反射により装置内部を見ていた)ため、実際に空を見た場合に
温度上昇に伴う収縮率の変化があるかどうかはわからない。


#コメント
  先日、Akiyama et al.時に、昔の収縮率と合わない等と(私が)言っていましたが、
  以前にFOCAS/MDPでモザイク規則の誤差がでた問題が発覚する前の実験を比較して
  いたため、今回は無視しました。最終的に今の1.006を求めた時の実験のみを参照しています。
  1.006がわかってからは収縮率の変化等を求める実験はしていません。



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今後できること
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アルミマスク
・アルミマスクの収縮率は正しいか、導入最終時にいつも同じ割合のmagnifyがでるか、
  温度との相関はどうか、を随時調査する。

アノダイズマスク
・アノダイズマスクは試験中であり、星野での試験が必要。
  今回求めた収縮率を加えたピンホールマスクを作り、正確に位置再現するかを確認する。
  できれば複数の視野で見る。
・アノダイズマスクを冷やすのに十分な時間を調べる。間接的にわかればよい。
  そもそも冷えているか、一様に冷えているか。
・アノダイズマスクはやや硬いが、冷え方に歪みがでないか。