マスクの冷却パラメータについて
とうこく
2005年5月 9日更新
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このレポートの概要
・2005年1月のヒロでの実験と山頂での試験観測の結果より、マスクの熱収縮率
について求めた。
1/熱収縮率は、山頂では 1.0054、ヒロでは1.004 となった。
・マスクを焦点面に長時間置いておくと、温度変化してピンホールの位置が
動くことがわかった。ヒロの実験(20℃)では5時間で0.05"程度。
・統計的な精度出し実験が引き続き必要である。
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◎2005年1月試験観測でのマスク冷却効果
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議論のメインはふたつ。
1)マスク全面にわたる収縮方向の分布
2)冷却パラメータ
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収縮方向の分布について@山頂
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ピンホールパターンマスクを用いて、2005年1月26日夕方のドームフラット
でとったマスクイメージ(mos6A.fits/mos6B.fits、electraローカルで取得)について
2005年1月試験観測から得た歪み補正をした上で、sextractor でピンホール中心位置
を検出。解析に使ったピンホールは約200個。
ピンホールグリッドパターンのマスクを2種類用意。パターンは2枚とも同じで、
ピンホールサイズは約0.17mm。目印として8個だけサイズの違う穴があり、
マスクによってサイズが異なる(φ2.0mmとφ0.5mm)。
sextractorでのピックアップは2.8 pix < FWHM < 4.0 pixで選んでさらにゴミは目で見て除外。
ピンホールの設計値はこちら。
実測した各座標に相当する設計座標をあてる。実際の設計座標は(x[mm],y[mm])を
Ch1. は 0.116495 arcsec/pix、 Ch.2 は 0.116872 arcsec/pix でピクセル単位
に変換した。実測座標と設計座標をgeomapにかける(平行移動、回転、倍率)。
熱収縮による倍率(平均の収縮率の逆数)は1.0054となった。
※M42のマスクを作ったときは熱収縮パラメータ=「1.005」とした。
geomapでのフィットの残差を検出器の場所によってプロットしたのが次のグラフ。
レーザ工作誤差は別途、現物のピンホール位置の測定と設計値との比較で求める
(別レポートの予定)。
ベクトル点がないように見えるところは大きなピンホールがあるため
測定していない点。
検出器1と2で傾向が見られる。考えられる原因は、
・マスクの平面精度
・マスクの温度分布
・マスクを押さえる力の分布
・レーザの加工精度(面の場所によって位置精度が均一でない等)
レーザ工作誤差は別途、現物のピンホール位置の測定と設計値との比較で求める(別レポートの予定)。
ピンホールの写ったところと設計値とのズレ
dr = sqrt(dx^2 + dy^2)
紫が Ch.1 、水色が Ch.2
紫が Ch.1 、水色が Ch.2
ピンホールの位置に対する測定されたホールの位置のズレのx、y方向成分。
dx = ホール設計値のx座標 - ホール測定位置のx座標
dy = ホール設計値のy座標 - ホール測定位置のy座標
y-dy相関の原因は、モデル座標系を検出器座標系にする際のまちがい
(歪み補正の領域など)や、モザイク時の誤差等が考えられる。
x-dx相関の原因はよくわからない。
黄緑が Ch.1 、青が Ch.2
オレンジが Ch.1 、グレーが Ch.2
M42マスクでのアラインメントホールと実際の星の位置のズレ量は以下の
ようになったが、サンプルが少ないのでよくわからない。
M42の場合、プレイメージングでの歪み補正誤差がx方向で約1pix、y方向で
約1.5pixある。
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冷却パラメータについて@山頂
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山頂でのマスクイメージから得られる冷却パラメータは、平均で1.0053だった。
M42のアラインメントホール(冷却パラメータ1.005で設計)と実際の星との
ズレ(冷却パラメータ誤差)は1.0012だった。
山頂ドームフラットでのマスクイメージと設計値を比較
mask# |
mask |
filter |
Xmag Ymag |
mos6 |
Pinhole Grid w/Small Holes |
J |
1.005406 1.005369 |
mos5 |
Slit Grid w/Small Holes |
J |
1.005273 1.005127 |
mos8 |
M42 pinhole |
J |
( ) ( ) |
|
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◎2005年1月 ヒロ実験でのマスク冷却効果
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2005年1月(試験観測の直前)のヒロでの冷却実験で初めて行ったMOSマスク冷却テストについて、
2005年1月版の歪み補正をして改めて解析を行った。(最初の簡易解析レポート)
実験
山頂で使ったのと同じピンホールグリッドマスクを用いてイメージを撮る。
Large Holes Small Holes
・マスク冷却テスト(mos)
マスクが冷えた状態で上から一様光を入れて、それぞれのマスクについて
H/K バンドで各5枚づつ撮像。
・時間経過テスト(netsu)
Small Holes のマスクを焦点面に入れたまま5時間放置してそのあいだ
撮像し続ける(10分に一回露出)。Hバンド使用。5時間経過したあと、
同じマスクでKバンドを5枚撮像。
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冷却パラメータについて@ヒロ
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1/収縮率は平均で1.0037。x方向で約1.0035、y方向で約1.004と方向によって
若干差がある。上に書いたように、山頂でのマスクイメージから得られる冷却
パラメータは平均で1.0053だった。
理論値は、アルミの熱膨張係数αをα=23E-6[1/K]とすると、dT=200Kのときで
l-dl/l=1.0046、dT=150Kのときで l-dl/l=1.0035となる。
ヒロと山頂夜の収縮率の差が単純にマスクの温度差だとするとその差は約70Kに相当する。
収縮率を求める @シミュレータラボ
mask# |
mask |
filter |
Xmag Ymag |
lab_mos14 |
Pinhole Grid Large holes |
H |
1.003527 1.004167 |
lab_mos15 |
( ) ( ) |
lab_mos16 |
( ) ( ) |
lab_mos25 |
Pinhole Grid Small hole |
H |
1.003457 1.004111 |
lab_mos26 |
1.003288 1.004074 |
lab_mos27 |
( ) ( ) |
|
geomapでフィットした後の残差ベクトル。大きなホールがあることによる
差はないように見える。
lab_mos14(w/Large Holes) lab_mos25(w/Small Holes)
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冷却パラメータの時間変化について@ヒロ
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マスクの収縮率は時間とともに小さくなっているのがわかる。減少率は5時間
でXmag=0.008%、Ymag=0.013%。これだと40000pixの端と端でのズレが5時間で
( dx, dy )=( 0.336pix, 0.524pix )=( 0.039" ,0.061") に相当する。
つまり長時間露出ではマスク温度変化によって天体がスリット(例えば0.5秒
スリットだと1割程度)ずれることが予想される。山頂では周囲の温度がさらに
20K 以上下がるので、変化量はこれより小さいと予想される。
山頂での長時間分光観測で確認する必要がある。
この変化が全てマスクの温度上昇によるものだとすると、4-6K相当である。
xy方向で収縮パラメータに差があるのが気になる。
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5時間露出での変化(マスクの温度変化があるか) @シミュレータラボ(25℃)
mask# |
Time |
Mask |
Filter |
Xmag Ymag |
netsu_1 |
0:00 |
Pinhole Grid Small holes |
H |
1.003247 1.003999 |
netsu_6 |
1:00 |
1.003221 1.003952 |
netsu_12 |
2:00 |
1.003202 1.003914 |
netsu_18 |
3:00 |
1.003185 1.003891 |
netsu_24 |
4:00 |
1.003169 1.003878 |
netsu_29 |
5:00 |
1.003163 1.003868 |
netsu_32 |
K |
N/A |
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