2005年1月 マスク冷却テスト
とうこく
2005年1月10日
2005年5月 6日 更新
---------------------------------------------------------------------
このレポートの概要
・2005年1月のヒロでの実験より、マスクの熱収縮率を求め、
収縮率 = 0.995 とした。
---------------------------------------------------------------------
実験
スリットマスクを冷やして、収縮や変形などを見るテストを行った。
検出器で撮ったマスク画像を使った初めてのテストである。
マスクは3種類用意した。準備についての詳細は別レポート。
1)ピンホールのグリッドパターン+小穴 →冷却パラメータ探し
2)ピンホールのグリッドパターン+大穴 →パターンによる影響のチェック
3)スリットのグリッドパターン →スリットの冷却による変形など
撮ったデータ
ピンホール・グリッドパターン+小穴 |
H/K |
exp=0sec |
(1)HKバンド各5枚づつ撮像
(2)焦点面で5時間放置。その間10分おきにHバンドで1枚撮る。最後にKを続けて5枚。 |
ピンホール・グリッドパターン+大穴 |
H/K |
exp=0sec |
HKバンド各5枚づつ撮像 |
スリット・パターン |
H/K |
exp=0sec |
HKバンドで各5枚づつ撮像 |
|
解析と結果
(1) ヘッダに DET-ID を書き込む
(2) Y軸反転
(3) ±90°回転
(4) 象限のズレ修正
(5) distortion補正
(6) モザイク化
(7) 各画像チェック
(8) ピンホールを sextractor で検出して設計値と比較
(4)は壱さんの、(5)(6)(8)は鈴木くんの作ってくれたタスクを使った。
--------------------
◎ 冷却効果について
--------------------
今回の実験では、カルッセル熱パス改良後の冷却実験が不十分なため
マスクの温度は不明。160K以下と予想される。
となり合うピンホール間の距離をもとめ、設計値と比較し収縮量を求めた。
下のグラフはx方向とy方向について実測距離をプロットしたもの。
ピンホールは両方向ともに同じ間隔。色の違いは検出器の違い。検出器の
境目(x=1800pixあたりの縦列)はピンホールの間隔(設計値)が異なるので外した。
ピンホールの間隔を測定
mask# |
x(Ch1)平均 x(Ch2)平均 |
y平均 [pix] |
全平均 [pix] |
設計値 [pix] |
収縮率 |
lab_mos23 |
165.421 165.683 |
165.631 |
165.569 |
166.4215 (9.2mm) |
0.99488 ---- 膨張率 1.00515 |
lab_mos24 |
165.406 165.605 |
165.670 |
|
換算パラメータは、1pix = 0".114、 1mm@カセ = 2".06218。
この結果より、1/膨張率=1.005 として、M42のマスクを作る際にはFOCAS/MDPで
作製したsbrファイル(天体の座標をレーザー工作用にxy座標に変換したもの)
の各値にかけることにした。
考察・メモ
(1) この解析当時は、歪み補正を0.114"/pixとして行っていた。
(2) ピンホールはサチってないものを選んで距離をとった。
1画像につき130個程度の距離の平均値である。
(3) y方は端で距離のばらつきが大きい。x方向は中心でやや大きい。
(4) 検出器によって収縮率に差があるように見える。
(ピクセルスケールの差なども考えられる。)
歪み補正の差は十分小さいはずである。
(5) 距離の最大誤差は約2pix(約0.2秒)で、0.5秒幅スリットの場合
半分ほどズレる可能性がある。
(6) この結果から推定されるマスク温度は、アルミの熱膨張係数αを
α=23E-6[1/K]とすると(この係数は低温でもう少し小さくなる)、
100K程度には冷えていることになる。
新しい熱パスになってから長時間冷やした場合のマスク温度を
測定してないので判断できない。
結果(平均値)より、dl/l=0.005
理論値はdT=200Kのときで、dl/l=αdT=0.0046
-----------------------
◎スリット形状について
-----------------------
未調査。
-----------------------------------------------------------------------
◎焦点面での時間経過(による温度変化によるスリット位置の変化)について
-----------------------------------------------------------------------
カルッセルから出して焦点面に入れた直後と5時間経過後の画像を比較して
同じピンホールの位置の差の平均をとったところ、平均で0.27pixほぼ同じ
方向に移動していた。(ピンホールは全面にわたってランダムに選んでいる。)
原因は不明。温度上昇?
鈴木くんの作ったイメージマッチスクリプトを使って(sextractorで検出後に
同じ天体を他の画像でピックアップして位置のズレをgeomapで測定する)
測定した場合も同様に平均で 0.23pix 同じ向きに動いていた。
(sextractorの拾ったものを個々にチェックしていないのでゴミも拾っている
可能性がある。)
0.2pix=約0.023"なので、とりあえず今はこれで問題なしとする。
------
この実験については後日改めて解析してレポートする。