M42領域でのMOS観測の結果
とうこく
2005年4月25日
2005年5月11日更新
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このレポートの概要
・2005年1月のMOS試験観測(M42領域)で行ったことのまとめ
・マスクのスリットやホールの位置と星の位置のズレは1pix(0".12)以下だった。
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M42領域でのMOS試験まとめ
2005年1月の初めてのMOS試験観測では、MOSマスクへの天体導入は手動で行った。
具体的には、
1)MOS観測前夜にドームフラットでマスクイメージを撮る。
アラインメントホールの検出器上の中心位置を求めておく。
2)MOS観測当日の最初にM42のスカイイメージを撮る。
3)アラインメント星の位置を測定し、アラインメントホール中心位置
とのズレの平均(平行移動、回転)を求める。
4)ズレ分を望遠鏡を振って動かし、再びスカイイメージを撮り、
星の位置を測定する。これを数回繰り返してズレを小さくする。
この時、J-band/10sec イメージを撮っていたこともあり、
プレイメージ(K-band/43sec)で選んだ天体では見えない
ものもあった。検出器Ch.1にある3つの検出しやすい天体
だけを使って、それがそれぞれのアラインメントホールの
ほぼ中心に入るようにした。時間の制約上、最後は平行移動
のみを微調整し、1つか2つの天体が直径4".0のホールの中心
約1-2pixの精度で合ってきた時点で焦点面にマスクを入れた。
5)マスクを入れたら、いくつかの天体がスリットにのっているのが
わかったので、それ以上のファインアラインメントをせずに
グリズムを入れて分光した。
この時点で、アラインメントホールに対して〜1ピクセル程度の
粗入れの悪さだけでなく、マスクの繰り返し位置精度(前夜の
プレイメージとの差)、プレイメージの歪み補正の差(2004年9月
の補正値を使っている)、たわみ(望遠鏡ELの差)による誤差など
(差がでるかどうかはまだ実験していない)などが含まれている。
平行・回転ともに導入精度は数ピクセル程度なので、導入精度じたいは詳細に
検討できない。熱収縮パラメータを求めることと、熱収縮の分布を見ることが
主な議論となる。
ピンホール(設計した星の位置)と実際の星の位置のずれ
M42領域のMOSマスク(スリット+アラインメントホール)と同じ天体で
天体の位置に直径0".4のピンホールをあけたマスク(マスク詳細はこちら)
のイメージ(2005年1月26日夕方のドームフラットで取得)と、27日夜に
撮ったスカイの星の位置とを比較。写らなかった星もあるので(詳細は
このレポートの一番下)サンプルは10個しかない。
使った画像は、mos8.fits/MCSA00005037.fits/MCSA00005038.fits。
geomapでフィットさせた後の残差ベクトル。
サンプルが少ないのでなんともいえない。冷却収縮の分布と比べて(右のグラフ)
2-3点逆センスの点があるが、天体のカウントが低くてフィットが悪いなど
測定精度にも問題がありそう。
星とホールの位置のずれをマスクの位置に対してプロット。
dr = sqrt ( dx^2 + dy^2 )
星とホールの位置のxy方向のずれをプロット。
dx = ホールのx座標 - 星のy座標
dy = ホールのy座標 - 星のy座標
1pix(0".12)以内におさまっている。
このgeomap比較から得られた magnify は x方向で1.0010、y方向で1.0015だった。
4000pixの視野の端で4-6pix(0.7秒)のずれに相当。やや大きいか。
もっと統計的なデータにするために、次回はMOSとは関係なしに星の位置に
ピンホールをたくさんあけたマスクを作ってテストする必要がある。
実際のデータ・各天体の情報
・アラインメントホール直径は4".0秒(約35pix)の円。
・スリット幅は0".5(y方向約4.3pix)。
・ファインアラインメントはしていない。
・スリットの中心位置はスリットイメージの明るさ方向をimexam-kで明るさ中心をとった。
・アラインメント星でホールのふちにぶつかったものが1個あった。完全に外れたものは
なかった。
・写った天体でスリットから完全に外れたものはなかった。
・「写っていない」というのは、他の画像でみても星がまったく検出されていないもの。
プレイメージと同じフィルタ・積分時間の画像がないので判断できないが、アライン
メント星に適さない星(かゴミ)だった可能性が高い。
・直前の画像では、視野にAGプローブが入り込んでいたが、ホールやスリットとは
干渉しない位置だった。
・「写っていない *」は HK分光ではスペクトルが写っていた。
天体セレクションには K-band/43sec イメージを使ったが、天体導入時のイメージング
やマスクイメージングでは J-band/10sec しかなかったために、写っていない天体が
あったと思われる。