VPH-K #3 冷却試験
2009年12月14-19日 東谷@三鷹

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実験の目的
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  ・低温での分光透過率を測定し、常温と異なることがないか調べる。
  ・搭載前に最低一回は低温サイクルにかけ、グリズムとマウントに異常がないかを調べる。


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方法
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  ・#2グリズムの冷却試験と同じ。前回のレポート参照。


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実験
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  #2グリズムの冷却試験と同じ。前回のレポート参照。


  前回と違うところは、マウントが未完成のため黒塗りをしていないことと
  (寸法が大きいため外側を削る必要があるが、内部は加工不要)、
  デュワーに載せるジグが光路を横切る部分を切ったこと。

   

  まずはグリズムを載せない状態でマウントをデュワーに載せて、リファンレスとして透過率を測定した。

    

  グリズムのマウント中にZnSeプリズムの辺部分に1-2mm程のクラックを作ってしまった。
  実体顕微鏡で見ると貝割れ状に目に見えるマイクロクラックがたくさん入り、きらきら光っている。
  海老塚さんと中嶋さんにも手伝って頂いた。冷却実験の準備はいったん中断。

     

  翌日、海老塚さんに手伝っていただき、セラミック用の目の細かいヤスリでクラック部分を削った。
  光を当ててもキラキラ光る部分はなくなった。

   

  マウントに載せる際は前回と同様に、マウントからグリズムが浮いてしまう問題が発生。
  VPHとプリズムの高さが揃っていないことから、グリズムの底辺を板バネで押さえる際に
  どうしても傾いた状態で安定してしまうのではないかと思われる。

     

      

  どこかが浮いている分、力がかかっている部分があり、このまま冷やすのはためらわれるが、
  今回の冷却試験では頂角が上の状態で試験を行うため冷却による悪い事態が起こりにくいのと、
  冷却実験を急ぐ理由があるため、このまま冷却試験を敢行することにした。

     


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実験経過
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  6K/hour(実際には約5K/hour)で冷却・昇温。昇温のさいごのほうは9K/hour(実際には約7K/hour)。
  温度が下がりきったとき、グリズムマウントは約120Kだった。
  この状態で液体窒素を入れたまま約1時間半測定したが、温度は4K程度上昇したのみ。
  60時間以降測定点が少ないのはLakeshoreによる温度制御が可能になったため。


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分光透過効率測定
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  ▼ 測定データ一覧

  常温と低温での透過率測定結果の比較。ピーク波長が異なるのは、デュワーの向きを反転させて撮った
  ことによる入射角の違い。
  頂角を上にして測定しているため、デュワーが同じ向きの時はグリズムの向きが多少(〜数度)動いても
  入射角の違いによる影響は少なく透過曲線はシフトせず、透過曲線の再現性は大変良い。
  冷却前の常温は約300K、低温は約120K、冷却後の常温は約320K。

  

  ここから読み取れるのは、
  1)低温では透過率ピークが少し下がる(〜5%程度)。
    常温は冷却の前後でぴったり一致。
  2)低温では透過率曲線の幅(特に短い側?)が少し広がる(FWHMの〜5%程度)。
    冷却後の常温は少し温度が高かったせいかわずかに長いほうへ狭くなっている。


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常温に戻ったあとのグリズムチェック
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  冷却試験後にグリズムをマウントから外し、クラックを削った部分を顕微鏡で見たが問題なさそうだった。

   


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考察・メモ
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  ・グリズムがマウント内で傾くのを防ぐ方法を考える。